薬の効果と作用機序
骨のバランス
健康な骨
骨は絶えず古い骨から新しい骨に生まれ変わり
「新陳代謝」をしてバランスが保たれています。
骨粗鬆症の骨
第一三共株式会社 骨粗しょう症の新しい治療 プラリアについてより
骨を壊す細胞(破骨細胞)が、骨を作る細胞(骨芽細胞)
より働かされ骨が壊され過ぎます。
骨のリモデリング
骨の再構築は「骨吸収」から始まります。最初に破骨細胞に働くような感じがしますが、最初の役割は骨芽細胞から始まります。
骨芽細胞の表面に RANKL (ランクル)という膜タンパクが現われ、それが血球系の細胞の RANK(ランク)という受容体に結合することによって、血球系の細胞が破骨細胞へと分化することから始まります。
分化・成熟した破骨細胞は骨を壊した後(骨吸収)、そこに骨芽細胞がやってきて吸収された分と同量の骨が形成されるようになります。この現象が骨の様々なところ で起こって骨は常に新しく置き換わり、一定に保たれています。
RANKLは、Receptor Activator of NF-kappa B Ligandの略で膜結合型の分子です。
抗RANKL薬
プラリア(デスノマブ)の特徴
1.骨吸収に必須のメディエーターであるRANKLを得意的に阻害
2.骨粗鬆症患者において、優れた骨折抑制効果を示す
3.腰椎のみならず、皮質骨の多い大腿骨頸部及び橈骨遠位端1/3に対しても骨密度増加を示す
4.6ヶ月に1回の皮下投与製剤
プラリア(デスノマブ)の作用機序
先にも説明しましたが、RANKLは破骨細胞の形成、機能調節に関わっています。骨粗鬆症患者ではRANKLの数が増え、破骨細胞が活性化しやすなって、骨がもろくなりやすい状態になっています。
そこで、このRANKLを阻害する働きをするのがプラリア皮下注です。
プラリア皮下注の主成分であるデノスマブは抗体の一種(モノクローナル抗体)であり、選択的にRANKLを抑制します。その結果、破骨細胞の働きを抑えることで骨吸収(骨が溶け出していく過程)が遮断され、骨密度や骨量が上昇し、骨粗鬆症を治療することができます。
プラリア用法・用量
効能・効果 |
骨粗鬆症。関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制 |
用法・用量 |
60mgを6ヶ月に1回,皮下注 関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制で,6ヶ月に1回の投与で骨びらんの進行が認められる場合,3ヶ月に1回皮下注可 |
用法・用量に関連する |
関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制:メトトレキサート等の抗炎症作用を有する抗リウマチ薬と併用 |
重大な副作用 |
低カルシウム血症、顎骨壊死・顎骨骨髄炎、アナフィラキシー、大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部の非定型骨折、治療中止後の多発性椎体骨折 |
投与期間制限 |
なし |
低Ca血症への対策
低Ca血症リスクは腎機能障害の程度や高齢者で高くなる傾向があるので注意が必要です。
発現は投与開始から数週間以内で多いとされていますが、それ以降にも起こり得ます。Ca値の定期的なモニタリングと患者への説明が不可欠です。
Ca値のモニタリングは、
(1)毎投与前
(2)低Ca血症のリスク因子がある患者(重度の腎機能障害、クレアチニン・クリアランス30ml/分未満など)では初回投与後2週間以内
(3)低Ca血症が疑われる症状(筋のけい縮、ピクピクした動き、けいれん、あるいは手指・足指・口囲のしびれ感、ピリピリ感など)が現れた時
低カルシウム血症が認められた場合は、カルシウムおよびビタミンDの経口投与に加え、緊急時にはカルシウムの点滴投与を併用するなどの速やかで適切な処置をおこなう
本剤使用時は、血清補正カルシウム値が高値でない限り、毎日カルシウム及びビタミンDの補充を行います。
腎機能障害患者や、既に活性型ビタミンDを使用している患者においては、適宜、活性型ビタミンDを使用するとともに、カルシウムについては投与の必要性を判断し、投与量を調整します。
デノスマブ(商品名ランマーク皮下注120mg)の紹介
ここでは詳しく紹介しませんが、この「プラリア」一般名「デスノマブ」は、既に「ランマーク」という別名で「乳がん、前立腺癌、肺がんなどの骨転移」の病気に、異なる用量で使用されていました。。
「ランマーク」は4週間に1回の注射ですが、「骨粗しょう症」に使用される「プラリア」はその半分の量を、6ヶ月に1回の皮下注射します。
デノスマブは破骨細胞の形成段階から阻害作用を示すため、ビスフォスフォネート製剤より強力な骨吸収抑制作用を発揮すると考えられています。
ランマークは、破骨細胞の骨吸収を強力に抑えるため、骨から血液へのカルシウムの移動が減ります。結果、血液中の濃度が低くなります。
投与中に生じる重篤な低Ca血症を予防・治療するには、沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム(商品名:デノタスチュアブル配合錠)の投与が必要となります。
天然型ビタミンを推奨する理由
投与するビタミンDについては,
①臨床試験で天然型ビタミンDが使用されたため,活性 型ビタミンDを使用した臨床試験データがないこと。
②一般に,漫然とした活性型ビタミンDの投与は 高Ca血症を引き起こすおそれがあり,また,本剤を使用する患者は骨転移を有しているために,高Ca 血症を起こしやすい状態であることから,活性型でなく天然型のビタミンDを用いることが必要です。
ただし,現時点で,天然型ビタミンD製剤は医療用医薬品としては供給されていないので,適切な一般 用医薬品を購入のうえ服用するよう,患者への指導が必要です。