成人スチル病の診療とトシリズマブ

成人スチル病

成人スチル病講演会を拝聴して

目次

成人スチル病(ASD)とは

成人スチル病(Adult Still’s Disease:ASD)とは、発熱・皮疹・関節症状を主な症状とする全身性の炎症疾患で、16歳以上において小児のスチル病(全身型若年性特発性関節炎、Systemic Juvenile Idiopathic Arthritis:sJIAとほぼ同義)に類似した症候を発症する疾患をいいます。原因は不明で、平成26年厚生労働省告示第393号により難病に指定されています。一般的に20歳~40歳代の比較的若い成人が発症しますが、70歳以上でみられることもあります。男性より女性でやや多いとされています。成人スティル病はリウマチ性疾患の中では稀な病気の1つであり、この病気を持つ方は人口10万人あたり2人程度です。原因はわかっていませんが、遺伝素因やウイルス・細菌の感染など環境因子が関係しているのではないかと考えられています。病態としてはマクロファージという細胞が活性化しており、インターロイキン(IL)‐6,IL-1,IL-18,腫瘍壊死因子(TNF)といった種々のサイトカインが過剰に産生されているものと考えられています。

ASDの症状

一般的には非感染性の疾患と言われていますが、遺伝素因やウイルス・細菌の感染など環境因子が関係しているのではないかと考えられています。病態としてはマクロファージという細胞が活性化しており、インターロイキン(IL)‐6,IL-1,IL-18,腫瘍壊死因子(TNF)といった種々のサイトカインが過剰に産生されているものと考えられています。

全身症状

発熱がほとんどの症例でみられます。発熱は38~39℃となることが多いです。このほか、発熱に伴って全身のだるさ、疲れやすさ、食欲低下、体重減少などがみられることがあります。

皮膚症状

リウマトイド疹(サーモンピンク疹)と呼ばれる特徴的な皮疹が60~90%に出現します。一般にそう痒は少なく、発熱時に出現し、解熱時に消退する傾向があります。

関節症状

70~90%で手・膝・足などの大関節を主体とする多関節炎として現れます。特に手と膝の関節炎が多いとされます。関節炎の程度は体温と並行することが多く、高熱時には疼痛や熱感が著明となり、発赤を伴うこともあります。

その他

合併症として、胸膜炎、播種性血管内凝固症候群(DIC)や血球貪食症候群と呼ばれる重症な病態が多くみられます。全身型>関節型

診断

診断には世界的にいくつかの基準がありますが、日本人によって提唱された以下の基準(山口の基準)が標準的に用いられています。

スティル病の診断基準(山口基準)
スティル病の診断基準(山口基準)  (J Rheumatol.19(3):424-30,1992から引用)

白血球増多、炎症反応高値、肝機能障害の上昇などがみられ、特に血清フェリチン値の上昇が9割の方でみられる。血清フェリチン値とIL-18とには相関性がみられ、血清フェリチン値が上昇するとIL-18も上昇することが分かっています。関節型より全身型で多くみられます。

  全身型 関節型
フェリチン値 上昇 低値
IL-18 上昇 低値

マクロファージ活性化症候群(MAS)について

マクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome:MAS)はsJIAにおける重大な合併症であり、ASDにおいても注意を要する合併症です。T細胞およびマクロファージの異常な活性化によりTNF-αを中心としたサイトカインの異常産生が起こり、重篤かつ致死的な状態になります。遺伝ではなく基礎疾患がある方に起こるとされています。急激な発熱、肝脾腫、リンパ節腫脹などの発現とともに、血小板数や白血球数の減少、AST、LDH、CKの上昇、凝固系異常、フェリチンの著明な上昇、尿中β2-ミクログロブリンの上昇などが認められると報告されています。
MASは急速に進行し死亡に至ることもあるため、臨床症状(発熱、けん怠感の増悪など)、検査値の変化より早期に診断し治療を開始することが必要です。また、MASの症状はASDの症状と類似しているため、早期の鑑別診断が難しく、治療開始時から注意する必要があります。

治療

治療の基本は副腎皮質ステロイドですが、ステロイド抵抗性やステロイド減量中に再燃(再び病状が悪化する)することも少なくなく、その際には他の免疫抑制剤が追加使用されます。

主な治療は、ステロイド薬、シクロスポリン、メトトレキサートですが、シクロスポリンは治療効果が弱く、MTXが第一選択薬となります。また、MTXはステロイドを減量する目的で使用されます。

ただし、活動性の高い寛解時期には、MASの出現予防のためにもステロイドで十分活動性を抑えてから使用します。

本来、IL-18阻害剤を用いることが良いのですがまだ研究段階です。IL-1阻害剤は海外でしか発売されていないため、本国における治療薬(IL-6阻害剤)生物学的製剤 は、トシリズマブ(商品名:アクテムラ)になります。トシリズマブは、全身型、関節型に有効とされています。

MASの強い場合は、シクロスポリンから使用します。

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