細胞膜受容体とシグナル伝達

細胞膜受容体
目次

受容体、細胞内情報伝達系

受容体の分類

細胞膜受容体

●イオンチャネル内蔵型
●Gタンパク質共役型
●チロシンキナーゼ関連型
●グアニル酸シクラーゼ共役型

細胞内受容体

●細胞質受容体
●核受容体

イオンチャネル内蔵型受容体

ニコチン受容体
GABAA受容体
グリシン受容体
セロトニン受容体
グルタミン酸受容体

●N受容体・N受容体:Na⁺チャネル内蔵型
Na⁺チャネル開口➡細胞内にNa⁺が入る➡脱分極

●GABA受容体・グリシン受容体:Cl⁻チャネル内蔵型
Cl⁻チェネル開口➡細胞内にCl⁻が入る➡過分極

●5-HT₃受容体:Na⁺,K⁺チャネル内蔵型
Na⁺チャネル開口➡細胞内にNa⁺が入る
K⁺チャネル開口➡細胞外にK⁺が出る

●イオンチャネル型グルタミン酸受容体
NMDA型、AMPA型、カイニン酸型:Ca2⁺Na⁺K⁺

構造

細胞膜4~5回貫通している受容体
4種のサブユニットからなる5量体(α α β γ δ)
受容体≒イオンチャネル
それぞれの受容体で異なるイオンチャネルを内蔵
受容体にアゴニスト(刺激物)が結合するとイオンチャネルが開口します。

Gタンパク質共役型受容体

アドレナリン受容体
ムスカリン受容体
オピオイド受容体

Gタンパク質とは

Gタンパク質共役受容体(GPCR : G Protein-coupled receptor)です。Gは、グアニンヌクレオチド結合の略です。

受容体を構成する分子が 細胞膜を7回貫通しているのが特徴です。また、Gタンパク質は、α、β、γの3つのサブユニットから構成されています。そのうち、Gαタンパク質のみがグアノシン二リン酸(GDP)やグアノシン三リン酸(GTP)と結合できます。GTPと結合したGαタンパク質は活性型で、GDPと結合したGαタンパク質は不活性型です。
いつまでも活性型でいると過剰な反応が起こってしまうので、Gαタンパク質にはGTPをGDPへ分解する能力が備わっています(GTPase活性)

「リガンド」の意味は① ⇒ 配位子 ② 特定のタンパク質や細胞膜の各種受容体などと特異的に結合する物質のこと。

この受容体に リガンドである情報伝達物質が結合するとGDPをGTPと交換して受容体が立体構造を変えて細胞の内部にあるGタンパク質と結合して活性化します。活性型となったGαは、Gβγと解離して、次の効果器へシグナルを伝達します。
「受容体に基質(メッセンジャー)がやってきた」というメッセージを細胞内に伝える役割に注目しcAMPをセカンドメッセンジャーと呼びます。

Gタンパク質の種類

Gsタンパク質共役型受容体

Gsのsはstimulate刺激の意味なので、アデニル酸シクラーゼ活性化。シクラーゼはcyclase(環状にする酵素)なのでそれによりATPがcAMP(サイクリック)つまり環状のAMPへ変換されます。cAMPはPKAを活性化し、PKAが種々のタンパク質をリン酸化。

語呂合わせ

じーさん ベタベタ アイツと エッチ  ダイスキ 兄も グルか?

じーさん=Gsタンパク
ベタベタ=β1受容体、β2受容体
アイツと=PGI2受容体
エッチ=H2受容体
ダイスキ=D1受容体
兄=A2受容体(アデノシン受容体)
グル=グルカゴン受容体

心筋

運動中など、動いている時に交感神経が興奮して心拍数が上昇します。

β1→Gs→AC→cAMP→PKA→細胞膜や筋小胞体のCa2+チャネルがリン酸化されて開口→細胞質へのCa2+流入増量→心筋収縮力増強。心原性ショックや急性心不全の際にはβ1刺激薬を投与する根拠となります。

平滑筋
気管支や消化管に平滑筋がありますが、どちらも交感神経によって弛緩し、副交感神経によって収縮します。
β2→Gs→AC→cAMP→PKA→ミオシン軽鎖キナーゼがリン酸化され活性低下→ミオシン不活性状態のまま→平滑筋弛緩。気管支喘息ではβ2刺激薬を用います。消化管にはアドレナリン受容体よりアセチルコリン受容体の方が優位なのでβ2刺激薬は用いません。ちなみに、β刺激薬が低カリウム血症を引き起こす機序は、β刺激→AC→cAMP→PKA→Na⁺,K⁺-ATPase活性化⇒細胞内へのカリウム取り込み亢進によるものです。


H2受容体→Gs→AC→cAMP→PKAがプロトンポンプ(H+,K+-ATPase)を活性化するため、胃内腔へのプロトン放出が促進されて胃酸分泌が亢進します。
だからH2ブロッカーが効くわけです。壁細胞にはコリン作動性のムスカリン受容体、ヒスタミンH2受容体、そしてガストリン受容体があり、それぞれの受容体が刺激されることで酸分泌が起こります。

膵臓のα(A)細胞
グルカゴンやアドレナリン・ノルアドレナリンが反応して、
PKA活性化→グリコーゲンホスホリラーゼキナーゼ活性化→グリコーゲンホスホリラーゼ活性化→グリコーゲンよりグルコース一1リン酸が切り出される→肝臓でグルコースー6ホスファターゼでグルコースへ変換⇒血糖値上昇

Na, K-ATPaseの生理機能

Na, K-ATPaseは,細胞内のATP1分子の加水分解に伴って,3分子のNa⁺を細胞内から細胞外へ,2分子のK⁺を細胞外から細胞内へそれぞれ濃度勾配に逆らって輸送します。体内のK⁺の98%は細胞内に存在して細胞の生理機能維持に関与し,細胞外液には2%しか存在しない.血漿のK⁺濃度が増加すると,アドレナリン,インスリン,アルドステロンなどのホルモンがNa,K-ATPaseを活性化してK⁺の細胞内への取り込みを促進し,生命の維持にとって危険な高カリウム血症を防止します。
神経や筋肉などの興奮性の細胞においては,Na⁺チャネルが開き細胞外からNa+が流入して脱分極した後,K⁺チャネルが開いて細胞外へのK⁺の流出がおこる.Na,K-ATPaseは,細胞内のNa⁺を細胞外へくみ出し,細胞外のK⁺を細胞内へ取り込むことによりNa+とK+の濃度勾配を回復して細胞の興奮性を維持します。

Giタンパク質共役型受容体

Giタンパク質共役型受容体のシグナル伝達

Giのiはinhibit(抑制)の意味。アデニル酸シクラーゼを抑制するためGsタンパクのシグナル伝達とは逆の作用を持ちます。
Giタンパクは少し特殊で、おおよそ中枢神経に発現しているものと考えた方がわかりやすいです。

語呂合わせ

あい は まだまだ(MαD)×2 がんばるべー

アイ=GiタンパクA受容体(アデノシン)
まだまだ=M2受容体α2受容体D2受容体
がんばるべー=GABA受容体

α2受容体
α2受容体は、ほかのサブタイプもありますが、ほとんどは中枢神経のシナプス前終末(神経伝達物質を分泌する側の軸索末端)に発現しています。
自ら分泌した神経伝達物質を認識する自己受容体であるため、その量を調節するフィードバックに関与しています。神経終末のノルアドレナリン濃度が高すぎると
α2刺激→Gi→AC活性低下→cAMP産生低下→チロシンからドパミンへの変換酵素(チロシンヒドロキシラーゼ)活性低下→ノルアドレナリン産生低下→ノルアドレナリンがα受容体に作用せず血圧低下

GABAB受容体
脳に広く分布している受容体ですが、Cl⁻イオンチャネルであるGABAA受容体とは異なり、Gタンパクを介して作用します。GABA神経のシナプス前終末もまた自己受容体であり、GABA濃度が高すぎると、
GABAB刺激→Gi→Ca2+チャネル抑制→GABAのエキソサイトーシス(分泌)を抑制

M2受容体
M2受容体は主に心筋に存在します。
Gi→K⁺チャネル開口→K⁺流出→心房筋過分極→活動電位が発生しにくくなる⇒心拍低下
抗コリン薬のアトロピンは、受容体遮断により心拍上昇させるため徐脈の治療薬として用いられます。

Gqタンパク質共役型受容体

Gqタンパク質共役型受容体のシグナル伝達

GqはホスホリパーゼC( PLC)を活性化します。PLCはPIP2(ホスファチジルイノシトール2リン酸)を分解します。

語呂合わせ

キュートな あたいはアイ マイ ミー ハイ  タクジー(タクシー)

キュート=Gqタンパク
あたい=AT1受容体
アイ=α1受容体
マイ=M1受容体
ミー=M3受容体
ハイ=H1受容体
たくじ=TXA2受容体

図はPIP2を表していて、赤いはさみはPLCが切断する部位です。これによりジアシルグリセロール(DAG)とイノシトール3リン酸(IP3)へ分解されます。

平滑筋は収縮と弛緩ともに同じカスケードで起こります。

平滑筋においては、DAGはPKCを活性化させ、筋収縮が起こります。
IP3は筋小胞体からCa2+の遊離を促進、Caがカルモジュリンと結合して複合体を形成し、ミオシン軽鎖キナーゼを活性化し、ミオシンがリン酸化され、ミオシン軽鎖がアクチンをたぐり寄せ、その結果平滑筋の収縮が起こります。

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