麻黄湯のインフルエンザ感染に対する効果
皆さん、風邪を引かれることがあると思いますが、症状の多くはいくつかのウィルスによって引き起こされていることをご存知でしょうか?
しかし、そのウィルスに対して有効な治療はまだなく対症療法で対応するしかありません。抗インフルエンザ治療薬もウィルスの増殖を抑える薬剤でありウィルスそのものを死滅させるものではありません。また、早期に投与しないと十分な効果を得られないのが現状です。
今回紹介する麻黄湯という漢方薬は抗インフルエンザ薬とは異なる作用機序で、インフルエンザ感染を抑制し、治癒と回復を早めることが複数報告されています。
抗インフルエンザ治療薬と麻黄湯の効果
オセルタミビル単独群をとオセルタミビル+麻黄湯併用群とに分け有効性を比較した試験があります。この試験結果では麻黄湯を併用した方が解熱の経過が良好で、その他の症状もより早く改善されることが分かっています。
さらに麻黄湯単独でも投与2日目から優位に熱が下がり、その他の症状も明らかに軽快したという結果を得られたことで、麻黄湯がオセルタミビルに劣らぬ効果があることが証明されました。
また、別の実験では麻黄湯の血中濃度を早期に上げるために、初回投与の1回だけ麻黄湯の投与量を通常の2倍、つまり2包投与すると、全身症状、頭痛、発熱、倦怠感が投与を開始したその日から有意差をもって改善されたとの報告もあります。
麻黄湯の使用時期
使用目標としては、平素から丈夫で体力充実した人の熱性疾患の初期で頭痛、発熱、悪寒、腰痛、四肢の関節痛などあり、自然発汗のない場合に用いるとあります。
つまり、発汗がなく、ゾクゾクと寒気がして、これから熱が上がると思える時が麻黄湯を服用するタイミングと考えられます。
発汗していない時に使ったほうが症状の改善度が高く、発汗したあとに投与すると症状消失までの期間が少し長くなる傾向にあるようです。
よって、麻黄湯は発汗前に投与を開始したほうがよいでしょう。
麻黄湯を用いる場合の注意点
体がひどく弱っている「著しい虚証」の人、また発汗の多い人には向きません。胃腸の調子が悪い人も慎重投与となっています。胃もたれを起こす場合があります。また、麻黄湯の中に入ってる杏仁には、緩下作用があり下痢を起こすことがあります。
麻黄には、心臓や血管に負担をかける交感神経刺激薬のエフェドリン類が含まれます。そのため、高血圧や心臓病、脳卒中既往など、循環器系に病気のある人は慎重に用いる必要があります。 尿閉にも注意が必要です。
甘草を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、「偽アルドステロン症」の副作用に注意が必要です。
まとめ
近年、インフルエンザ迅速診断キットやノイラミニダーゼ阻害薬の開発で、インフルエンザ治療には大きな進展がありました。さらに今年に入り、新薬「ゾフルーザ」が発売されました。今までの作用機序とは違う「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤」と呼ばれる種類の薬です。細胞内でのウイルスそのものが増えないようにする働きをします。
しかし、風邪のようなウィルス感染で、西洋医学では対処する方法がありませんが、漢方医学であれば対応できます。
漢方薬である麻黄湯もインフルエンザだけでなく、他のウィルスにおいても増殖抑制作用も確認されています。幅広い分野で期待されるお薬であることを覚えておきましょう。